あなたにもできる! 簡単洗脳講座A

・第三段階/挫折の克服、告白と一体化
 6日目夜。参加者達には既に時間の感覚はない。40時間以上も起き続け、
空腹は局限に達している。講義の後、一人づつ自分の変えたいところ、自分の
嫌なところを告白させられる。大師達は、それまでよりさらに鋭く、尋問のよ
うに言葉で参加者の心をえぐり、心の醜い部分をすべてさらけ出させる。冷酷
に、無慈悲に。
 すべての参加者の告白が終わると、教祖の写真が引き出され、参加者は、そ
の前に体を投げ出し、すべてを告白し、許しを請うように勧められる。そうす
ることによって変わることができる。感動的な話をしてくれた先輩達が、自分
達もそうやって変わったことを強調する。
 一人が体を投げ出す。するとどうだろう、さっきまで鬼判事のように舌峰鋭
く彼らを問い詰めた大師達が、優しく、暖かく、告白した人間を祝福している
ではないか。参加者達は我先に告白を始める。全員が告白を終えると、参加者
と大師、さらにその道場で居住する出家者、先輩達も含めて、大夕食会が催さ
れる。もちろん、壁には尊師の御真影(写真)。食事の前には神と教祖への祈
りを捧げる。彼らは尊師の下に限りない一体感を感じ、自ら進んで入信する。
 この時点で告白しない人間には、半ば強制的に告白させる。告白させた後は、

彼の告白以前の人生がいかに間違っていたか、告白がいかにすばらしい体験で
あったか、それを繰り返し言い聞かせる。大師や先輩達だけではない。今まで
一緒に修行してきた参加者達も、一緒になって彼を説得する。こうして洗脳は
強化される。
 

・第四段階/洗脳の強化、被洗脳者の再生産
 7日目。すべては終了した。参加者達は皆一様に、虚ろで焦点の定まらない
目をしている。いったんは家に返され、在家の修行者となったり、出家したり
と人それぞれである。
 さて、彼らへの洗脳はまだ完全ではない。放置しておけば洗脳は解けてしま
う。そうなった者を再洗脳するのは容易ではない。そこで教団は、勢力拡大と
洗脳の強化の手段として、彼らに布教活動を行わせる。彼ら新参者は、教団の
教えや世界観を体系的に理解しているわけではない。時には相手に突っ込まれ
てボロを出す。しかし、教えや世界観を言葉にし、他人に説明するために、全
体を理解しようと勤める。今度は自分が先輩として、新しい参加者達に告白の
感動を伝える。そういった経験を通じ、洗脳は深められ、完璧になっていく。

・まとめ
 もう一度、簡単に洗脳のプロセスをおさらいしよう。

(1) 参加者を日常から切り放し、隔離する。
(2) 精神的空白の状況に追い込み、そこに洗脳する内容を刷り込む。
(3) 大きな壁を乗り越えさせ、それによって、参加者に一体感を感じさせる。
(4) 洗脳内容を再確認させ、強化する。

 以上の四段階を経て、洗脳は行われる。上記の例はあくまで基本である。実
際には第二段階で肉体を傷つけ、相手の身体的欠陥などを罵倒して自尊心を失
わせるのは常套手段であるし、第三段階の「大きな壁」が殺人(親しい友人や
血縁者、弱者ならなお良い)であったりする。
 

・逆洗脳、あるいは解体
 宗教団体を脱会する。それは決して楽なことではない。教団や仲間は、あら
ゆる手段を用いてそれを阻止しようとするだろう。再洗脳も試みるだろう。な
ぜなら、信仰を捨てる人間を許容することは、彼らの世界の崩壊につながるか
らである。しかし、やめようという強い決意さえあれば、結局はやめることは
可能である。
 問題になるのは、本人にその意志がなくて、家族がやめさせたいと考えてい
る場合だ。その場合、まず本人の身柄を確保することが困難だ。本人が家に帰
ることを望まない以上、誘拐のような形になることは必然だ。その途中、「お
父さん目を覚まして!」とか「助けて!」などと絶叫され、あらぬ誤解を受け
ることにもなろう。そうならないためにも、専門家に頼るべきである。
 さて、ターゲットの身柄を確保したら、邪魔の入らない、教団に悟られない
場所に隔離する必要がある。逃げ出さないようにするためもあるが、洗脳の時
と同じように、隔離する必要からだ。
 ターゲットは、最初激しく抵抗する。そのために、イスやベッドなどに縛り
付け、暴れない様にする必要があるかも知れない。彼は暴言を吐き、罵り、わ
めき散らすだろう。しかし、怯んではいけない。彼の言葉や態度に怯みを見せ
れば、逆洗脳はとたんに難しくなる。
 逆洗脳は、信仰の矛盾を衝いていくことで行われる。チベット仏教を基にし
た団体ならば、ダライ・ラマの教えとの矛盾を説き、キリスト教系なら、いか
に聖書の教えをねじ曲げているかを指摘する。
 それは粘り強く、根気良く行わなければならない。その宗教が基にしている
宗教に関する豊富な知識と、相手の教義に関するある程度の知識を持ち、忍耐
強く、自信にあふれた人物でなくてはつとまらないだろう。
 ターゲットが、わずかでもその教義の矛盾に気づけば、あとはそこから切り
崩していけば良い。しかし、そこに至るのは容易ではない。数日間、時には数
週間かかることもあるだろう。しかし、最初の突破口が開ければ、ターゲット
は過ちに気付き、懺悔し、自分が洗脳されたことを知るだろう。
 しかし、それで終わったわけではない。洗脳したばかりの時と同じように、
ターゲットは非常に不安定で、なんらかの刺激で元に戻ってしまう可能性があ
る。そのため、さらに数週間は隔離を続け、常に周囲に誰かがいて、観察を続
ける必要がある。一度逆洗脳した人間が再び洗脳状態になると、それを再び逆
洗脳することは難しい。しかしまた、その数週間を乗り越えれば、同じ方法で
洗脳するのは難しくなる。いわば免疫ができるわけで、そうなれば安心だ。も
う二度と同じ危険は侵さなくなるだろう。


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